「コロッケ2つと、メンチカツ2つ、あとほうじ茶2つおねがいします」

「はい」という返事のあとで鸚鵡返しに繰り返されたそれにうなづいて、払ったお金は680円。
すぐ食べます、といえば店員さんはお決まりの笑顔で「かしこまりました」とひとつづつ紙に包んでくれる。
後ろで居心地悪そうにたっていた彼に商品を持ってもらってから、私はほうじ茶2つとおつりを受け取って、店をでた。
店に隣接して作られている縁側風の腰掛に二人そろって腰掛けて、ちょっと一息。

「ん」

差し出されたコロッケとメンチカツに「ありがと」と手を伸ばして、二人そろって食べ始めた。
彼はコロッケから。
私はメンチカツから。

「おいひー」

ね、と彼のほうを向くと「食べながらしゃべらない」とひじでつつかれたあと笑われた。
もー、人がもの食べてるときに肘でつつかないのもマナーでしょう。
言えばお互い様だと、彼は目で語った。

リンリンリンと鳴く鈴虫。
風が抜けるたびにチリーンと涼しげな音を奏でる風鈴。
晩夏で、初秋だった。
音を楽しみながらも食は進んで、350mlのお茶が無くなるころには私の右手には紙くずが二つ。
彼はとっくに食べ終わっていて、食後の一服を楽しんでいた。
セブンスターの紫煙が夕暮れの風に遊ばれて、仄暗くなり始めた空に消えていくのを見送りながら、つかない足をプラプラ。
それを見咎めた彼に「つかないの?ちっさ」なんていわれて「うるさいな」と返しながら笑う。

酷くゆっくりと、ゆったりと流れる緩やかな時間。
こんな時間が、いつまでも続けばいい。
けれどそんなの、望んではいけないことで、望んでもかなわないこと。

彼はゆっくりと白く灰になっていくそれをフィルタから1センチ半まで吸ってから、携帯灰皿に入れた。

気がつけばもう夜の帳は下りていて、空には輝く金星と少し赤い半月。
ああ、もう帰らないといけないね。

「さーて、じゃあの短足もみたことだし、行くか」
「短くないっつの!」

そんな話をしながらつく家路。
けれどお互いに手はつながない。

つなげばこの距離が壊れてしまう気がして。
壊れてしまうぐらいなら、つながない方がいいような気がして。

きっとたぶんそれは彼も思っていることで、けれど言えないことなんだろう。
彼がボンゴレという大きなマフィアの、10代目だから。

 

 

 

 


でも、きっと。

 

 

 

 

 

「綱吉」
「ん?」

 

 

 

 

 

きっと、いつか。

 

 

 

 

 

「んー・・・ん、なんでもないー」
「何だよそれー」

 

 

 

 

 


いつかあなたがそれを言う前に、言ってあげるよ。
いつか、そう、遠くない未来に。

 

 

 

 

 


もう一度風が凪いで、風鈴が涼やかな音を立てた。