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「ねえねえ、かーさん」
「なあに」
「かーさんはクモなのに、なんでとーさんたちとお仕事しないの?」
3歳児の割りに、は口達者である・・・と、は苦笑した。
自分が3歳だったことなど覚えてはいないが、はたして・・・―――普通の3歳児はここまで舌が回るものであろうか。
「かーさんは、と一緒に居たいから蜘蛛だけど蜘蛛じゃなくなったのよ」
「クモだけどクモじゃないって何ー?」
「うーん・・・」
彼女は困ったように笑った。
つまるところ育児休暇なのだが、子供にわかるように説明しようにもそれではまず性教育からはじめなくてはいけないのではないのか・・・いいのか、3歳児で性教育、否・・・良かろうはずが無い。
「が大人になったらわかるかも」
「オトナ?オトナってなにー?」
「えっとねー、それは・・・」
―――・・・わたしがオトナになったら、ゼーダは・・・
彼女の暗く淀んだ緑の瞳のその奥が、揺れる。
「かーさん?」
「ん・・・んー、そうねぇ。が20歳になったらオトナになるのよ」
「20さい! あたしは、3さいだから・・・えっと、ええと・・・あ、両手で足りない・・・かーさんの指も貸してー」
「はいはい」
「いち、にー、さん、しー、ごー・・・・・・・・・・・・・・・じゅうろく、じゅうひち・・・あと17年もある・・・」
どこかしょんぼりした風に目じりを下げたに、慈しみの在る眼差しを向けたは「もしかしたらがいっぱいいっぱいお勉強したら、オトナになる前にわかっちゃうかもよ」と、勉強促進の発言も忘れない。
もちろん、は眉をハの字にして嫌そうな顔をした。
の精孔は、開きかけている。
親の家業が家業であるため、常日頃からオーラに当たっているのが原因だ。
そしてクロロはそれをいいことに遊びと証して団員にかわるがわる基礎体力の特訓をやらせ――それでなくとも6ヶ月にして少女は駆け足を覚えており(通常ならば2歳ぐらいまで駆け足は出来ない)それを見た団員は「流石・・・」と生ぬるい笑みを浮かべた――はと言えば完全に4大行をが習得した暁には、すぐにでも能力開発が出来るようにと毎日毎日本という本を読み聞かせ、想像力を豊かにさせるため様々な映画、クラシックCD、動物のドキュメンタリーDVDを見させ聞かせている。
これほどまでの英才教育が他にあるだろうか・・・いや、ない。
「まったく、よくやるよ。もクロロもさー」
「とかいってシャル、アナタが一番熱心じゃない。パソコンの授業」
パクノダに指摘されたシャルナークは後ろ頭をかきながら「まぁね」と笑った。
団員たちはそれぞれ"授業"を分担をしていて――最初は決まっておらずほとんどの団員が戦闘面であーでもない、こーでもないと自己主張してしまって、なかなか特訓が始まらないのを見かねたが「ジャンケンで役割分担きめましょう?」と近年まれにみるブラックな笑顔で提案したのがきっかけだ――基礎体力をフィンクス、ウボォーギン、フランクリン。まだ段階ではないが念の修行に入ったらクロロとを中心に系統別で班分け予定としている。その他パソコンをシャルナーク、家事全般をパクノダ、人体生物学をマチとフェイタン、字の練習をノブナガが、代わる代わる教えていた。といっても大体の面子がいつも誰かしら本拠地には居ないので、誰がいるかによって毎日のメニューが違う。
そして今本拠地にはルシルフル夫妻とその娘、生まれたときからにべったべたなパクノダと次の作戦のために戻ってきていたシャルナークしかいない。
その暇ではないはずのシャルナークの横で、赤い"ボンボン"で髪の毛をちょこんと縛っているが黙々とキーボードをいじっている。
つたない手つきではあるが、一応はブラインドタッチをしているようだ。
「しゃーくん、できたよー」
"しゃーくん"とはもちろんシャルナークのことである。
幼児の舌ではラ行の発音は難しく(もちろん、今ではできるのだが)どうしても"シャウ"になってしまうので――
一時期蜘蛛では、彼のことをシャウというあだ名で呼ぶのが流行った――しゃーくんに落ち着いた次第だ。
因みにパクノダは同じような理由で"お姉ちゃん"に固定である。
その際クロロに「パクはいつから俺の子供になったんだったか」と冗談を言われたが、彼女はそれを黒い笑顔でスルーした。
「んーどれどれ・・・おお! 打ち間違えなくなったじゃん!」
「えらいえらい」と頭をなでてもらいながら、は「ほめられたー」としまりの無い顔で笑う。
パクノダはそれをほほえましそうに見やってから「、おやつにしましょう」と少女の肩を軽く叩いた。
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