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「でもほんと・・・無事に育ってくれてよかったわ」
「無事に育ったというか・・・育ちすぎじゃないか?」
主に身長が、である。
は3歳児にしてもうすでに120cmを超えているのだ。明らかにおかしい。
その辺の5、6歳児と変わらない大きさに成長している。―――・・・そう、外見だけならばそのぐらいに見られてしまうのだ。
実は中身もそんじょそこらの3歳児とは(過度な英才教育のせいで)訳が違うのだがそこは如何せん"あの"とクロロである。
現段階の少女に満足などしてあろうはずも無かった。
「いいじゃない、女の子なんだからその内とまるわよ」
クロロはの座るソファーの背もたれに後ろから肘をつきながら「そんなものかな」と少し考えるふうにつぶやく。
目の前でパクノダとシャルナークと一緒に餡蜜を食べるを見ながら、彼女は「そうよ」と静かに笑った。
かかりつけの医者の紹介で診てもらった婦人科医には「おそらく死産だろう」といわれていた。
理由は彼女が毎日飲んでいる毒を煎じたお茶。
彼女の念能力【契約の蛇―ヨルムンガンド―】の制約に"少量の毒を毎日飲み続けなければならない"というものがあり、彼女は当然ながら毎日少しずつ少しずつ自らの体を蝕ませていっていた。
―――・・・赤ん坊の体に、それは強すぎる。
彼女はぐっと唇をかみ締めて「それでも」と、とその暗く淀んだ緑の瞳を毅然と持ち上げて医者を見た。
それでも、彼女はお腹の子供を・・・―――クロロとの明確な繋がりを望んだ。
胸に刻まれた蜘蛛の刺青は、彼との繋がりではなく"蜘蛛の団長"との繋がり。
彼女はそれでいいと思っていたし、彼もそれを望んでいたから。
けれど、でも。
これは・・・―――この子は"クロロ"との繋がりだから。
そして彼女は医者の反対も団員たちの反対も、クロロの反対も全部押し切ってを産み落とした。
「ほんと、あの時はえらい騒ぎだったわね」
「まったくだ・・・死産でも生むとか言う奴はいるし、その腹の子は逆子だし」
「逆子だったけど帝王切開しなかったじゃない」
「お前が危篤状態だったけどな」
彼女は笑いながら「ご心配をおかけしました」とすぐ横にあるクロロの頬に唇を落とした。
クロロはその黒く透明な瞳を少し見開いてから「誘ってるのか?」と笑う。
「あら、誘ってほしいの?」
「俺はいつでも、誘ってほしいが?」
彼は黒く透き通った瞳を軽く細め、その唇を彼女の唇に・・・―――落とそうとして、シャルナークに止められた。
「二人とも、イチャ付くのは自室でお願いしていいかな」
「そうよ、の情操教育上大変よろしくないわ」
教育熱心な"お兄ちゃん"と"お姉ちゃん"に苦笑した両親である。 |