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「ひどいよ!」
「そーだよ、なんで言わなかったんだよ!!」
いきなりの罵声に面食らった彼女である。
数度瞬きをしてからややあって、彼女は「なんで怒ってるの?」と口にした。
「昨日!!200階にあがるための試合だったでしょ!!」
「応援!!できなかったじゃねーかよ!!」
きゃんきゃんにゃんにゃんと喚く子犬と子猫のような少年2人を前に、彼女はしまったと後ろ頭をかく。
朝一番に知らせに行こうとしたのだが、あの真っ黒な瞳のでかい子供ときたら、結局また時間ぎりぎりまで自分を放してくれず。
結局また遅刻しそうになりながら会場へ向かったのだ。
だがしかし、そんな如何わしいオトナノジジョウを話すなんてことは、この少年達の情操教育上大変よろしくない。
「ご、ごめんなさいね。次の試合には必ず招待するから・・・」
「次とか意味ねぇよ! 今丁度ゴン、念使う試合見ちゃいけねぇんだからさ」
ああ、もうそんなところまで原作はきたのね、と彼女は黒髪の怒れる――というよりは拗ねてる、といったほうがいいかもしれない少年を見やった。
猫目の少年はこれ見よがしにため息をついて見せてから「あいつ、師匠の忠告無視して試合して、全治2ヶ月」と呟いた。
彼女は、原作で知っている展開ではあるけれど、確かに少年らしい、と少し笑って「そうなの」と相槌をうつ。
「んー、そうね、じゃあお詫びに何かおごってあげるわ。おいしいケーキ屋さんがあるんだけど、行く?」
とたんに目の色を変えたお子様2人に、彼女はニッコリ笑った。
200階では道具の使用が認められる。
もちろん念もだ。
しかしこんな大衆の目の前で発を見せるなど、愚の骨頂。
彼女は冷ややかな瞳を目の前の独楽を操る彼に送った。
「さあお嬢さん、楽しい舞踏会の始まりだ」
「そうね、でもごめんなさい。私は誰とも踊らないわ」
すでにゴングは鳴っている。
ギドはの出方を見ていたのだが、彼女がなかなか技を繰り出してこないことに痺れを切らし彼お得意の【散弾独楽哀歌―ショットガンブルース―】を繰り出した。
彼女はそれを狙っていた。
はすぐさま髪の中から鉄線を引き抜き、周で強化したそれでもって10個の独楽すべてを真っ二つに切り裂いたのである。
『おおーっとこれは!これは以外や以外!!選手いったいどこから取り出したのかその右手のなにやら細い鞭でギド選手の独楽すべて、すべてなぎ払ったー―!!だがしかーし!!ギド選手の技はあの小さい独楽だけではないのです!!!』
しかしギドの対応もすばやかった。
独楽が使えなくなったとわかり、すぐさま【竜巻独楽―たつまきごま―】を発動させたのである。
だが―――・・・。
「言ったでしょう? 私は誰とも踊らないの」
彼女は言うやいなや目にも留まらぬ速さでその鉄線を振るい、彼自身の軸足を粉々に打ち砕いた。
軸を失った彼は無様に転がり、その勢いでもって場外に転がっていく。
それこそまるで、独楽のように。
審判の「ギド選手、場外!」という言葉に覆いかぶさるように、会場は歓声と怒号に包まれた。
『圧っ勝ォー!見事な圧勝です!!選手、200階初戦にしてわずか5分!わずか5分で勝利です!!その俊敏にして華麗な戦いぶりは、まるで鳥のようであります!!!』
狼の次は鳥なのね、と彼女は少々皮肉った笑みを残してリングを降りていった。
「やぁ」
声をかけてきたピエロに彼女は「あら、めずらしい」と白々しく言ってのけた。
ピエロはのどの奥でクツクツ笑いながら隣のマチ肩を抱こうとする。
しかしその手は振り払われた。
「釣れないねぇ・・・ボクらはこれからお昼だけど、キミもどうだい」
「そうねぇ」
ちらりとマチに視線を合わせた。
彼女は眉間にしわを寄せつつも、少し肩をすくめる。
それにちょっとだけ笑って「いいわよ」と口にした。
「そうかい、じゃあパスタでも食べに行こう」
「もちろんおごってくれるわよね、私のも、マチのも」
言われたマチは、こいつに奢られるくらいなら自分で払う!という心底嫌そうな顔をしたのだが、はそれを目で制す。
嫌なのはこの男で、この男の持ってる金は別に嫌じゃないもの、というのは彼女の持論であった。
「もちろん、それぐらいはするさ。ボクは紳士だからね」
「どこがよ」
思わずハモった彼女達である。
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