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―――・・・、。聞いて頂戴。
なあに、かあさん。
―――・・・あなたの植えた桔梗がね、咲いたのよ。
ああ、去年植えたやつね。そっかぁ、ちゃんと咲いたのね、よかった。
―――・・・それからね、柿の実が今年もたくさんなったのよ。
そういってかあさん、去年も渋柿だったじゃない。今年はちゃんと甘いの?
―――・・・あとね、それから・・・それからね・・・
かあさん、泣かないで。ねぇ、泣かないでよ。
私まで悲しいから、ねぇ、泣かないで。
ちゃんと聞いてるよ、私。だからねぇ、かあさん・・・。
「・・・ぁ、さ・・・」
「・・・・・・?」
目を開けると、そこは薄汚れた見慣れない天井。
いつもよりスプリングの悪い、少し埃くさいベッド。
それから横に、人の気配。
一瞬ドキリとしたがよく見知った気配だったことに安堵する。
割れてないものの亀裂の入った窓からは朝日が差し込んでいて、室内は明るかった。
「・・・」
彼女は我知らず手を額に乗せる。
―――・・・向こうの世界に帰ってしまったと、おもった。
一瞬考えた後、いや、と内心首を振る。
もしかしたら、帰ってしまわないとまずいのかもしれない。
夢のあの母親の言葉が本当なら、向こうの季節も1年経っているということになるのだ。
と、いうことは―――向こうの体は約1年近く植物状態。
まったく、ぞっとしない話である。
「・・・ん」
「ああ、ごめんなさいね、おこしてしまったかしら」
「・・・いや、いい、おきた」
微妙に会話になってない、とおもいつつ彼女はそれ以上考えるのをやめた。
考えても仕方がないことであるし、もし向こうに戻ったとしてもたぶんこの体もこの意識も、元からこちらにあったものであるから、きっと彼女自身が消えてしまうということではないのだろう。
向こうの記憶がすっぽりと抜け落ちるだけだ、きっと。
・・・きっと、この感情までは、なくならないだろう。
「決行は夕方からだったわねクロロ」
「・・・ああ、そうだが」
「じゃあ、そうね、15時ぐらいまでちょっと街を散策してきてもいいかしら」
「好きにしろ。ただ、緊急事態には対処できるように携帯だけには出てほしい」
「わかったわ」
言うがいなや彼女はベッドから起き上がり、身支度を整えるべく靴を引っ掛けた。
その背中に「散策行くならみんなにも夕方まで自由行動だと伝えてくれ」と声がかかる。
それに彼女は、なんだか修学旅行みたいねと笑いながら「わかったわ」とうなずいた。
「旅行か。なら、お土産をもってきてくれ」
「そうねぇ・・・ベンズナイフと面白そうな情報でも持ってきてあげるわよ]
彼と彼女は、お互いに悪戯っぽく笑った。
The
Second Chapter End |