「久しぶりね、デートなんて」
「そうだな」

緑を帯びた長い黒髪が、午後の風にさらりと揺れる。
彼女は顔に掛かったそれをさっと払いながら、彼の大きく筋張った手に指を絡めた。
それに彼は微笑して握り返す。
どこにでもいる、普通のカップルの光景だ―――男と女の素性を知らなければの話だが。

「そろそろお茶にするか」
「そこにちょっと小さいけど、カフェテラスあるわよ」
「じゃあ、そこで」

今日は9月3日。
ゴン達が蜘蛛に捕まって、ネオンの念をクロロが盗み、同時多発テロが起こる日。
もしかしたら、ウボォーギンをあのままアジトへ運んでいたら、テロは防げたかも知れない。
けれど、そうしてしまったら大きく原作が変わってしまうかもしれないというリスクがある。
そうしたら、もしかしたら他の団員が危険になる、もしくはクラピカが死んでしまう可能性も否定できない。
彼女はそっと、瞼を下ろした。



―――・・・これは、私の我が侭。



たった2人の命のために、多くの人の命を奪う。
もし誰かがこの事実を知ったなら「それはお前のエゴだ」と罵られるだろうか。

「どうした?」
「あ、ううん、ちょっと・・・眠いのよ」

ぱっと瞼を上げれば結構近い位置にその黒く透き通った瞳があった。
少し驚いたがしかし、彼女はふっと笑って彼の頬に唇を落とす。

「・・・積極的だな」
「近くにあるからよ」

あっけらかんとして言う彼女に彼は少し笑って、彼も彼女の頬に唇を落とした。






















「申し訳ありません、正式な参加証をお持ちでない方はお通しいたしかねます」
「え、ええー!?」

その声にはふっと笑った。
写真の中の彼女はずいぶんと高級そうな服を着ているが、あの少女が写真の中の彼女で間違いない。
検問官がどうしても通してくれないと分かったのか、彼女は残念そうに肩を落としてこちらへ歩いてくる。
はその淡い色のキャミソールドレスを纏った少女に近づいて「どうかしたの?」と声をかけた。

「えっ・・・と?」
「ああ、ごめんなさいね。何かお困りのようだったから、つい・・・」
「あ・・・あの、私オークションに参加したいんだけど、参加証がなくて」
「あら、そうなの? 私もこれから参加する予定なのよ・・・そうね、見たところいいとこのお嬢さんみたいだし、もし良かったらご一緒にどうかしら」
「い、いいの!?」

パッと顔を輝かせた彼女に、はニコッと――腹の中では黒い笑みを浮かべて――笑った。

「ええ、ただもう一人連れが・・・あ、来たわ。ねぇ! この子も一緒につれってっていいかしら?」

彼女が声をかけた方向を少女は振り向く。その顔に驚きが広がった。
サラリと流れるような黒い髪と漆黒の瞳を持つ青年が、そこに立っていたのである。

「ん? 友達?」
「いま知り合ったばっかりよ。見たところいいところのお嬢さんだと思うのだけれど。でね、参加証を持ってないから通せないって言われたらしいの・・・だめかしら?」
「またお前の悪い癖か・・・ん、あれ? 君・・・」
「・・・?」

青年にジッと見つめられた少女は疑問符を頭上いっぱいに並べて彼を見つめ返した。
その顔にピンッと来たのか、青年はその漆黒の瞳を極限まで見開く。

「君、ノストラードファミリーの・・・」
「あ、はい。娘のネオンです」
「あら、本当にいいとこのお嬢さんだったのね。・・・ね、良いでしょクロロ」

彼女は少女の背中でそういいながら、ニッと黒い笑みを浮かべる。
クロロはそれにさわやかな笑顔で「もちろん、ノストラードファミリーの娘さんとご一緒できるなんて光栄だな」と答えたのだった。

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