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「"エーリューズニル(Eliudnir)は、神話に出てくる死者の国の女王ヘルの住居のことである"・・・だってさ、団長」 彼女の言ったとおりクロロの腐敗は2週間後には完治した。 「まあでも、これで彼女のことが少しわかったね。顔も割れてるしさ」 至極うれしそうに笑うシャルナークにため息をついて「だが」とつぶやいた。 「追うな、と念を掛けられてるだろ」 そういって意地悪な笑みを向けたシャルナークに不覚にも殺意を覚えつつ、思いつかなかった自分がどれだけ焦っていたのか判ったような気がして、苦笑する。 「今はまだ動かない方がいいよ、彼女も警戒レベルあげただろうし。闇雲に探し回って僕らが捕まったら目もあてられない」 たしかに、彼女はハンターではないにしろ相当な腕を持つ手馴れであり、情報屋としても相当な腕をもつとのことで有名である。 「もう少し時間をおいたら、動こう・・・確実な方法で」
「あー、ありがとう。おなかぺこぺこだったの」 だったら向かいの定食屋に行けという顔をされたが、そんなものはお構いなしにサンドウィッチにかぶりついた。 「この前の件だけど」 おそらく報酬のことだと思ったに違いないマスターに「そういう意味じゃない」と前置きして、紅茶で喉を潤す。 「あの時なんだかデッカイ蜘蛛に鉢合わせたんだけど」 言うとマスターはその威厳たっぷりな顔におかしそうな笑みを浮かべて「それで駆除したのか?」とのたまう。彼女は「まさか」と肩をすくめながら2つ目のサンドウィッチにかぶりついた。 「殺虫剤が手元に無かったから新聞紙でたたこうと思ったんだけど、なかなか死ななくて怖いから逃げてきちゃった」 ふふん、と鼻を鳴らしたらマスターは面白そうにひとしきり笑って――といってもマスターは声なんかあげないしその厳しい顔を少し緩ませただけなのだが――カシューナッツが盛られた皿を取り出す。 「しょうがないからこれで勘弁してくれ」 よくよく見ればその皿はどこかで見たことのある柄をしていた。 「ってこれ、ルガンダ王国の・・・」 あきれてものも言えないとはこのことだが、くれるというならもらっておこう。 「国宝がつまみ用の皿ってどうなのよ」 いわく「皿は使うためにある」とのことだ。 |