いやいや、ハブられているわけじゃない。
皆「さーん、次移動だよ〜」とか言ってくれる。
いってくれるだけで輪には混ぜてくれない・・・いや、私が混ざらないだけか。
ていうかなんていうの、中学受験戦争を抜け出てさあ!やっと高校デビゥ!見たいな雰囲気に若干ついていけない私がいるわけで。
なんていうか、若い子のテンションについていけない。
・・・おばさんくさいかしら・・・。

というわけでお昼は私、常に一人でむなしくお弁当を広げてるわけです。
最初は教室で食べてたんだけど、何かと男子は騒ぐし女子の視線は気になるしで、結局外で日向ぼっこしながら食べることにした。

グラウンドに面した芝生はすごく日当たりがいいのを知ってたし、何よりお昼はまばらに人がいてどことなく安心する。
4月の風はそよそよと耳の後ろを撫ぜて行って、少しくすんだ青い空のきれいな事。
気分がいいので思いっきり歌いたかったのだが、何しろ外だしなあと思いつつひざを抱えた。

―――・・・小声なら、ばれないばれない。

「Re・・qui、em・・・」

元の世界の合唱部で歌っていたこの曲は、こっちの世界のもあるのだろうか。
あるだろうな、有名な曲だもん。

「ae・・・ter、nam・・・」













ふと、急に寒気が走った気がして、目を開けた。
とたんに、さっきまで青かったはずの空が茜色に侵食されていることに気づく。

――――・・・しまった。

まさか芝生の上で爆睡するとは思ってなかった。
思ってなかったというか・・・あれぇ?
おかしいなあ、時間軸狂ってませんかこの世界。いや、ただ単に寝てただけか・・・。
他称・眠り姫のあだ名は伊達じゃないってか。
ていうか無防備すぎだよ私。

とりあえず校舎に入る。
昇降口はガランとしていて、人気はなかった。
どう見ても放課後だ。



なんで誰一人心配してくれないかな・・・。




ガックリと肩を落として教室に向かった。














カララッ

教室のドアを開けた。

ピシャッ

閉めた。




―――・・・せ、せ、せ・・・セナくんが泣いてるぅうううう!!!




すごくデジャブ。
きっとあれだ、これ、春大会の王城戦直後だ!
どうしてこんなのだけ覚えてるのかな。
こんなんだからお母さんに「漫画ばっか繰り返し読んでないで勉強しなさいっ」なんておこられるんだ。

「・・・ぇー」

まずい。まずいです。まずいですよ奥さん3回言うぐらいマズイ。
ここはきっとフラグだけど・・・いや、何回かあった。セナくんとのフラグは。
たとえば席が隣だったとか、ひっそり国語(限定)の答えを教えてあげたりとか。
まあつまり、普通のクラスメイト並みの関係なんです、今。
だから彼が主務をしてるってのも知ってるのは当たり前で。
・・・でも、彼がアイシールド21だってわかってる私は・・・。
いや、それよりも、ここは声をかけてあげるべきか。
かけたらやっぱ関わることになるんだろうか。アメフト部と。
・・・あの、金色の悪魔と。

「・・・」

避けたい。それは避けたい。メンドウなのは嫌いだ。
負けるのも泣くのも大っ嫌いだ。
・・・でも。

でも、私は泣いてるクラスメイトにハンカチぐらい差し出す心は持ってるんです。







カララ・・・

ドアはとても軽い音を立てた。
セナはもう泣いていなかった。・・・というか、おずおずと顔を出した私に苦笑いすら見せてくれた。

「・・・あの、ごめんね小早川くん、びっくりしちゃって」
「あ、いいんだ。てか戻ってくるとはおもわなかった」

なんていいながら気恥ずかしそうに後ろ頭を掻くセナに、なぜか胸が締め付けられる思いだ。
なんとなく姉崎の気持ちがわかる気がする。

「何か、つらいことでもあったの・・・?」

そう白々しく聞いた私にセナは俯いた。

「・・・アメフト部」
「うん」
「負け・・・負けちゃったから、王城に」
「うん」
「・・・だから・・・」

ボロリ。
その大きな涙は、そんな音が聞こえそうだと思った。
あわててミニタオルをポケットから取り出して、セナが座ってる席の真横にひざをついてソッとぬぐう。
面食らったのか、セナはそれ以上言葉をつむげないでいた。

「じ・・・事情はその、よく、わからないけど・・・」

なんて、また白々しく慰めの言葉を口にのせる。

「きっと、きっとね?泣いた分だけいいことがあるから」

そう、いいことは今これから起こるから。

「だから、そんなに苦しそうな顔で笑おうとしなくていいよ」

だから、心配しなくていいよ。

そして勢い良く教室のドアが開く。




―――・・・ほら、きた。




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