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新しい選手が増えた。
姉崎さんにゾッコンLOVEのファンキーモンキーモン太くん。
分かりやすいアプローチが逆にすがすがしいほどだが、それがまったくわかってない姉崎さん。
鈍い。にぶいです。
・・・が。
なんとなく。そう、どことなく。
いつもセナにかまっていて全然そうは思えないけど、ヒル魔さんが好きなんじゃないかなあ・・・と思うときがある。いや、うん。原作もそうだったってのもあるけどさ。
実際見てみると、やっぱりこうなんていうか女の感っていうか"ハハーン?さてはフフフ"みたいな。
あれ・・・なにか今、胸の辺りにとげが刺さったような、もやもやした変な気分になった、ような。
―――・・・あれ?
ライスくんが轟々と燃えてる。
アクリル絵の具の燃えるにおいがわずかにする中で、私は何か、気がついちゃいけないものに気がついてしまった。
それはまだパステルカラー以上に淡くて、大好きなホットレモンより甘酸っぱいもの。
いや、そんなんじゃない。全否定する。
ありえない。ありえません。
よりによって萌え対象であるはずの金色の彼なんかに、そんな淡い思いをもつ、だなんてこと。
それに、だって、私、この世界の人じゃない・・・から。
「おーい、ごはんだよー」
「はーい」
お父さんの声に呼ばれて下の台所に降りる。
珍しく定時であがってきたお父さんは食卓につくと、らしくなくため息をついた。
「どうしたの?」
「あー・・・取引先の香港に1ヶ月ぐらい出張することになったんだ」
「また?」
半導体(パソコンとかの中に入ってる緑色のカードみたいなあれ。)を作っている工場で設計をしている
お父さんは、またため息をついて見せた。
その横ではなぜか嬉しそうにニコニコしながら焼きあがったドリアを取り出しているお母さん。
・・・まさか。
「・・・一緒に行くのお母さん」
「あ、やだわかっちゃったー?」
ウフフーと笑うお母さんに苦笑いするお父さん。
ちくしょう万年ラブラブ夫婦め。
私は「はぁー」とわざとらしくにため息をつく。曰く、カードもしくは通帳を置いていくように。
「あ、スグルもいないわよ?」
「は?なんで」
「学校遠いでしょ?で、お母さん向こうにいっちゃうし、さっちゃんの家にあずけようかとおもって」
"さっちゃん"は私の従姉で、お母さんのお姉さんの娘にあたる。
―――・・・さては、図ったな、スグル・・・。
と、横を向けばそ知らぬ顔でラザニアをつついていた。
「ちなみに、ばあちゃんは本家に行くらしい」
「ちょ、あれ!?」
家に一人ですか?
私、家に一人ですか?
いえ、一人暮らしは確かに念願でした。
―――・・・しかしそれは大学生活をするからであって
「と、いうわけでガンバレ」
そう親指立てられましてもおおおおおっ!?
朝起きると、みんないなくなってました。
行動が早すぎるとおもうんです。
一人ガラスのハートで泣きながらご飯をついばんで、学校に足をむける。
このハートを誰か受け止めてくださいマジで。
1Kとかそういうアパートならまだしも、普通の住宅に1人は怖い。
校門をくくると、すでに栗田がガショーンガショーンとものすごい音を立てていた。
それに軽く頭を下げて部室へ向かう。
「オハヨーゴザイマース」
「おう」
半裸の悪魔が軽く手を上げた。
「・・・スイマセン」
とりあえず閉めた。
しかし、色白いな!腰細いし!なんだあれ!萌える萌えるよカワイイー!
・・・じゃ、なくて!
ヒイイイイイイイイイ!
私はなんてことをなんてことを!!
半裸なんてスグルのしか・・・っ弟のしか見たことないよ!
なんだあの引き締まった腕!?
抱きしめたい!
違うだろ!
と、耳まで真っ赤にしてしゃがみこんだらガラッとドアがあいた。
思わず上を向いた自分をのろいたい。
「テメェ、随分冷静・・・」
「〜〜〜〜っ!!!」
ま だ 半 裸
「・・・ケケケ」
そんな顔して笑わないでー!
鼻血でそうだよでないけど!
「おら、そんな真っ赤になってねーで部室はいれ」
とかいいながら強引に立たされて部室の中に放り込まれた。
なんだ!?なんで!?いや、着替えて!?
上に羽織るだけでしょ!?でしょでしょ!?
と、思いつつカジノテーブルのイスにちょこんと座ってうつむいた。
「お前・・・俺上半身しか裸じゃねーんだぞ?なにそんな赤くなってんだ」
いや、別に免疫がないわけじゃない。
弟とかお父さんとかで見慣れてるはず。
ちがう。違うんだ。
男の裸に慣れてないとかじゃなくて―――。
「・・・て、くだ・・・い」
「あ?」
「ゆゆゆゆユニフォーム早く、早くきききききてくださいいいいいいい」
その白くてすらっとした体を早くしまってください!
だめだ、だめだめ!!
その白くてまぶしい陶磁器のような肌を早くしまって!
「はーん・・・?」
ヒル魔は何をおもったのか、ニヤリと笑う。
怖!なにその邪悪な笑み!
と、思った瞬間その黒い三白眼に真っ赤になった自分がうつっているのを確認した。
間近で。
「テメェ、まだこの前のこと意識してんのか」
ニヤリと笑われたのが見えないほどに近い距離。
そう、まるで、この間のように・・・
―――・・・シャンプー臭ぇ。
あの幻聴が、よみがえったような気がした。
その瞬間。
「き・・・―――っ・・・―――っ」
あまりの衝撃に叫び声すらあがりませんでした。
そう、私・・・私・・・。
耳 を か ま れ た 。
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