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本拠地探検ツアーといっても、少女はもう既にすべての部屋という部屋を探検しつくしていた。
西側の窓から見る夕日がとてもキレイだとか、屋上から見る夜空はいつも少し霞んでいるとか、1階の誰も使っていない部屋にかわいいお花が咲いているとか。
でも、ひとつだけ入ってはいけない部屋がある。
クロロとの寝室だ。
いつからだったかはもう記憶に定かではないが、少女が3歳の誕生日を迎えたときには既にあの部屋へは入っていけないと言われていて、少女はごくごく最近の記憶をあさってみても、あの部屋の記憶は無かった。
だがしかし、クロロが居るとしたらあの部屋だろう。
彼らの寝室は最上階の左端にある。
たしかとんでもなく広い部屋だったことだけは漠然と覚えているのだが・・・。
―――・・・コンコンコン
彼女は少し遠慮がちにノックした。
「・・・か?」
「だよ、とーさん」
「ああ・・・ちょっとまってろ」
なにやらバサバサバサっという紙が崩れる音がして、少女は少し肩をすくめたが、その瞬間にドアが開いたので中の様子が少しうかがい知れた・・・―――本が、山のように積んである。
どうやらさっきのはその一部が崩れた音のようだ。
そして、ベッドは無い。見当たらない。
カーテンは遮光性なのか光はわずかしか漏れておらず、部屋は全体的に暗かった。
「で、どうした。今日は基礎体力訓練のはずだろう」
「あのね、ひーくんからこれ、もらったの」
少女はずっと持っていたせいで少しシワシワになりつつあるピンクの包装紙に包まれた、幾分重い箱を差し出す。
クロロはそれを訝しげに見やってから「・・・ヒソカから?」とさらに眉間にしわを寄せた。
「ひーくんが、かーさんととーさんに見せてから開けてねって。で、かーさんに見せたらなんか・・・えーと、ほんとはひーくんに頼みたくなかったけど、ひーくんが一番暇だったからたのんだ・・・? って、いってたよ」
「・・・ああ、わかった"アレ"か・・・」
「・・・?」
彼は「そういえば頼んであったな」と一人ごちて、その箱を受け取った。
かわいく包装されたその箱を凝で見やるとそこはかとなくオーラが漂っているのが判る。
確かに、例の品だ。
「・・・ふむ、なかなかいいモノを選んだようだな」
「ねぇねぇとーさん、それ、開けてもいい?」
少女を見やればその真っ黒な瞳をキラキラさせていて「早く中身が見たい」と顔に書いてある。
クロロは苦笑した。
確か子供のころ、自分も仲間もほしいものを見つけるたびに、手に入れるたびに、こんな目をしていたような気がする。
「わかった。じゃあ下にいって開けよう。俺も中身が見たい」
「うん! あ、でもとーさん、開けるのはあたしだよ!」
「お父さんが開けちゃだめなのか?」
「だめ!」
力いっぱい"いーっ"をしてみせる少女にクロロは喉の奥で笑いながら「わかったわかった」と部屋を出た。
ピンクの包装紙で包まれた"アレ"を少女に渡してやれば、少女はニパッと笑って階段へ向かう。
そのすばやい行動はどっちの親譲りだろうかと、若干親ばかなことを考えつつも、クロロは少女の背中を追った。
「、お父さんに追いつかれたら、それお父さんのなー」
「ええー!?」
少女は悲惨な叫び声を上げて階段をダカダカダカっと降りていく。
それを後ろで悠然と駆け足しつつまったく追いつくつもりのないクロロは、今度こそ声を立てて笑った。
「せ・・・せーふ!!」
「こら、階段は危ないから走っちゃだめって言ってるでしょ」
「だってお姉ちゃん!!あたしのコレ、まけたらとーさんのになっちゃうんだよ!?」
その真っ黒い瞳を若干涙目にして、少女はパクノダに訴えた。
後ろからニヤニヤと笑いながら降りてきた父親と、少女の手の中に在るピンクの包装紙――もう既にしわくちゃであまり可愛くない――で包まれたなにやら箱のようなものを交互に見やってからおもむろにため息をつく。
「クロロ、そういう弄りは良くないわ」
パクノダの言葉に少女は「えっ」という顔を作って後ろの父親を振り向く。
その彼と言えばもうなんだかご機嫌最高潮のような顔をしていた。
「はは、面白くてつい」
「ま、まただまされたー!!!」
漫画であったなら少女の背後には"ガーン"という文字が入ってるに違いない、とパクノダはもう一度ため息をついてから「が居間で待ってるわよ」と若干まだショックの抜け切れていない少女の背中を軽く押して、居間へと促した。
「クロロ」
「なんだパク」
「その内"お父さんなんてキライ"っていわれちゃうわよ」
ご機嫌最高潮の笑顔が固まった瞬間である。
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