少女はふと、朝日が昇る直前に目を覚ました。
既に自室を与えられていた彼女は、音もなくムクリと起き上がり白み始めている空を映す窓を見る。
しばらくじっとして少女は息を潜めていたが、朝日が昇る瞬間にその小さな口を開いた。

「ヘイムダルさま」

少女がその名を口にすると、程なくして光の中に一人の女性が現れ――だが女性はいやに朧気で存在感は皆無に等しい――その能面のような無表情のまま「お前か」と呟く。

「はい、および立て申し訳ございません。しかしながらヘイムダルさま、このリライ、少々解せぬことがございまして」
「申してみよ」
「何故、このような姿でございましょうか・・・」

少女はその年に似合わぬ微妙な表情を作り、その深海色の瞳で目の前の女性を仰ぎ見た。
しかし女性はその表情一つ変えず「そんなことか」とため息すら聞こえていきそうなほど早口で答える。

「我は人の子の性別まで操れぬ。運が無かったと思われよ」
「ですが」
「然程問題なかろうリライ。その童は入れ物にすぎぬ。それにやっと"意識がはっきり"したというのにまた生まれる前に戻すとは、単なる"時の浪費"であろう?」
「・・・はい」
「リロウも同じ考えならばそのように伝えよ」
「御意」

女性は最後までその無表情を変えぬまま、朝日の中に解けていった。
























、いいものあげるよ」

珍しく集会に現れたピエロが、これまた珍しくピンクの包装紙でかわいくラッピングされた箱を片手に、目下基礎体力訓練中のに近づいた。
相手をしていたフィンクスがものすごく嫌そうに眉間にしわを寄せたのだが、少女は特に気にした様子もなく「ひーくんだ!」と――シャルナークのあだ名と同じ理由で少女は彼のことを"ひーくん"と呼んでいる――パッと笑顔になる。

「おいヒソカ、変なもんはやるなよ」
「信用ないなぁ」

ニヤニヤと粘っこい笑みを浮かべるヒソカにフィンクスは「ケッ」とどこぞのヤンキーのような態度をとった。
それにまたクツクツと喉を振るわせたピエロは「安心してよ」といいながらにそのかわいくラッピンクされた箱を渡す。
何気に重いそれには少しだけ首をかしげた。

「ひーくん、これなぁに」
「まだあけちゃだめ。オトウサンとオカアサンに見せてからね」

はちょっと残念そうな顔をしてから「はぁい」とイイコのお返事を返して、箱は近くのコンクリートの上に置きフィンクスとの修行を再開する。
ピエロはそれをちょっと眺めた後「じゃ、ボクは先に中にいってるね」とワザとらしい台詞を残して本拠地の中に消えた。



















「やぁ」
「・・・ヒソカ」

彼女は飲んでいたお茶を机の上に静かに下ろし、その深く淀んだ緑の瞳をスッと細めた。
ヒソカはその顔に内心ゾクゾクと背筋を泡立たせたが今はとりあえず報告が先だ。

「例のモノ見つけて持ってきたケド、先ににわたしちゃったよ」
「・・・普通、依頼主のところに持ってくるものじゃない?」
「でも結局あの子にあげるんだろ?」
「・・・」

無言の彼女に彼は喉を震わせて「安心してよ」と先ほどもいった言葉を口に乗せる。
彼女は「アンタ自身がすでに安心できない」という表情をわざと顔に貼り付けたが、ピエロはただ笑ってそれを面白がるだけだ。
息を一旦吐き出した彼女は毒を煎じたお茶を飲み干して席を立つ。

「オトウサンとオカアサンに見せてから開けてねって言ってあるから」
「・・・アンタにオカアサンって呼ばれると怖気が走るのよ」

彼女は湯飲みをグッと握りながら、心底嫌そうに顔をゆがめた。

























はヒソカにもらった箱をラッピングされたままの状態でへ渡した。
彼女は一瞬だけ顔を顰め、ハァとこれ見よがしにため息をつく。

「かーさん?」
「・・・ほんとはね、ヒソカには頼みたくなかったんだけど、アイツが一番暇だったのよねぇ」

ため息混じりに一人ごちる母親を、はその真っ黒な瞳で不思議そうに見やってから「その箱あけていい?」と首をかしげた。
子供は物欲的だよなぁ、とは苦笑する。

「ヒソカにお父さんにも見せないとだめって言われたでしょ」

は今度こそ口を尖らせてぶーたれたが、でも確かに先ほどそうにいわれた記憶があるので「はぁい」と元気無くイイコのお返事をするにとどめた。
は「イイコに育ってるわぁ」と誰とはなく感心して、未だラッピンクが外されてない"例の箱"を父親の元へ持っていくようにとを促す。

「とーさん、ドコ?」
「さぁ・・・お出かけはしてないから、修行だと思って自分で探しなさい」

かくして、の本拠地探検ツアーが開始されたのである。

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