ピンクの包装紙の中から出てきたのは、シックなデザインの木箱であった。
中に何かが入っているようなのだが、如何せん箱はうんともすんとも言わない。
少女は首を捻った後、それを見守るようにソファーに座っている両親を見やった。

「あかないー」
「でしょうねぇ」

そういって笑う彼女に、少女は若干困惑した顔を向ける。
彼女はさらに笑みを深めてクロロを見やった。
クロロはひとつうなづいてから少女の後ろに回りこんでその小さな肩をその大きな手で包み込んだ。

「いいか、手に意識を集中するんだ」
「いしきをしゅうちゅう?」
「箱を開けたい、どうしても開けたい、って強く願いながら手に力を注ぎこむの」
「あけたい・・・ちからを、そそぎ、こむ・・・」

少女はその真っ黒な瞳に瞼をかぶせた。
そして意識という意識すべてを手に集中させる。
耳の感覚、足の立つ力、思考、肩から伝わるクロロの体温、その意識をすべて、箱を持つ手へ。




――――・・・カチッ




「あ、あいた?」

少女はパッと瞼を開けて後ろに経つクロロと目の前のソファーに座るを交互に見やった。
2人ともニッコリと笑っていて、後ろのクロロは「やっぱり俺の子だ」と珍しくも少女の頭をなでる。

「おめでとう、
「え? なに? あたしの誕生日もう過ぎちゃったし、そのときプレゼントもらったよ?」
「違うわよ」

言うと彼女は立ち上がって少女の目の前に膝を折った。
深く淀んだ緑の瞳が、やさしく笑っている。
彼女は少女の真っ黒な瞳をじっと見つめてから口を開いた。

「いまのが念よ、

















念とは体からあふれ出すオーラと呼ばれる生命エネルギーを自在に操る能力のこと。
生命エネルギーは誰もが微量ながら放出しているが、そのほとんどが垂れ流しの状態になっている。
コレを肉体にとどめる技術を纏。
オーラを完全に絶って気配を消す技術を絶。
纏で体にためたオーラを一気に増幅させる技術を練。
そして練で練ったオーラを終結させ、いわゆる「念能力」と呼ばれるものが発。

「コレがいわゆる四大行だよ」

少女はふんふんとうなづきながら必死でお気に入りのジャッポンニッカ学習手帳に文字をつづっていく。
もうこの手帳は5冊目で、既に終わった4冊は字の練習やら落書きやら人体の急所などが乱雑に書かれていて真っ黒だ。

がさっきやったのは一番最初の纏」
「・・・はい、しゃーくん、しつもんです」
「うん?」
「あたしさっきまで"念"って全然聞いたことなかったのに、なんでできたの?」
「ああ、それはね、俺たち全員が念を使えるから」

先ほども言ったとおり念とは本来誰にでもある生命エネルギーを自在に操る力。
だがそれを使うことは誰にでも出来ることじゃない。
使うためにはまず生命エネルギーを使える状態にしなければいけない。
コレには方法が2つある。
ゆっくりと少しずつ他人から念を当てられつつ使えるようにしていく正当な方法と、一気に強い念を当てて体に危機感を感じさせ、無理やり起こす外法なやり方。
に関しては特別念に関して使えるようにしてやろうとは誰も思っていなかったのだが、如何せん周りが周りである故に、常日頃ら"念"に少なからず"当たっていた"。
これが"ゆっくり起こす"方法に相当していたのである。





























<<シャルナークの誰にでもわかる念講座>>を横目で見ながら、ルシルフル夫妻とパクノダは午後のティータイムに入っていた。
カモミールティの香りを楽しむ傍ら、パクノダはどうにも落ち着かない様子で少女を見ている。

「ねぇ、早すぎない? まだ3歳でしょ?」
「気持はわかるけどパク・・・」

彼女は静かにソーサーを置いて、シャルナークの講座を真剣に聞く――頭の出来は結構普通なので理解しているのかは定かではないが――少女を見やった。

「この環境で念を念と知らないまま育ってしまうのは、危険すぎるわ」

先の丸い刃物しかしらない子供は、その先が鋭かったらどうなるのかを知らない。
そういった子供は得てして自分で怪我をしてから初めてそれは"危険なもの"と認識するのであるが、それでは遅いのだ。
念を念と知らないまま育ち、もし何らかの形でその能力を使ってしまったら、危ないのは本人に他ならない。

「でも逆に言えば・・・ここには判りやすく説明できる人材も、どういう風に攻撃するのかお手本を見せられる人材もそろってる」
「身内で小金浮かせようって考えが見え見えよ・・・」
「知らない人間に家の娘を預けられるか」
「・・・クロロはいい加減、親ばかよね」
「やぁーねぇー、パクも人のこと言えないくせに」

にほっぺたをつんつんされながら、頭を抱えたパクノダである。

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