「それじゃ実際に、念能力がどういうものか見てみようか。中庭に行こう」
「はぁい」

はイイコのお返事を返してジャッポンニッカ学習手帳を閉じ、席を立った。
シャルナークは「ほんとにあの二人の娘とは思えない、素直でイイコだよなぁ」とボソボソとつぶやいて少女の背中を追う。

、ちょっと協力して。君のが一番わかりやすいし」

確かに今居るメンバーの中で一番判りやすいのは特質といえど具現化寄りな
本当なら一番わかりやすいのはコルトピなのだが、と彼女はちょっと苦笑した後「いいわよ」と彼女も少女の背中を追った。



















具現化した【束縛からの解放―フェンリル―】を、はおっかなびっくりシャルナークの後ろから見つめた。
それに喉の奥で笑いながら――そういうとこクロロと似てるよね、とはシャルナークの言葉だ――彼女は【束縛からの解放―フェンリル―】を子犬サイズまで縮める。

「大丈夫よ、この子自動じゃないから、自分の意思で噛んだり出来ないの」
「う、うん・・・」

少女は未だどこか不安気ではあるが、シャルナークの後ろからそろそろと出てきて小さくなった【束縛からの解放―フェンリル―】の真横に腰をかがめた。
手動の紅い狼はが命令しない限りは微動だにしない。まるでぬいぐるみのように。
そのことに気づいたのか、少女はその子犬程度の狼をひょいっと持ち上げた。

「あ、ちゃんと重いんだね」
「内臓とかはないわよ。でもある程度の存在感がないと乗れないのよね」
「? ふぅん」

判ったような判っていないような顔をした少女はしかし、これが"念"であるということはしっかりと把握していたようで「この子は何が出来る子?」とその真っ黒な瞳を瞬かせた。

「その子は自分を束縛・・・ええと、縛ってるものね、紐とか、鎖とか。そういうのから抜け出したり、後は背中にのって空を走ったりできるのよ」
「空!?」

つまりは重力の"束縛"から"解放"して走っているわけだが、それを説明してもきっと判らないだろうなぁ、と彼女は苦笑する。
シャルナークは顔にありありと「空、飛んでみたい」と書いてある少女にやっぱり子供だなぁと少し笑ってから「空を飛ぶのはまた今度」と少女の肩に手を置いた。
はそれと同時に【束縛からの解放―フェンリル―】を消し去る。
少女は悲しそうに眉をハの字にしたが、それ以上愚図ったりはしなかった。
























あれからというもの少女は基礎体力訓練と念の修行を、平行して行っている。
ごく最近行った水見式で少女の能力は操作寄りの特質系だと判り、まさに蛙の子は蛙。

「じゃあ、準備はいいわね?」
「うん」

ゆっくりと少女はあの時ヒソカにもらったシックなデザインの木箱に手をかけた。
そう、あの時木箱は中の錠が外れただけでいまだに誰も中身を見ていなかったのである。
というか、は中身が最初にうちこそ気になっていたのだが、なにぶん怒涛の修行ラッシュ続きだったので半分忘れていたというのが本音だ。
果たして・・・―――木箱の中には古ぼけた細長いカードが入っていた。

「あ、タ・・・」

それを見た瞬間、少女は一瞬絶句し次いで近年まれに見る笑顔を惜しげもなく顔面に咲かせた。

「タロットカードだー!!!」

=ルシルフル3歳。あらゆる占術分野の知識において右に出るものは居ないであろう、占い師も真っ青の占術マニアである。

そう、幼いころからずっとやってきたの英才教育――すぐにでも能力開発が出来るようにと毎日毎日本という本を読み聞かせ、想像力を豊かにさせるため様々な映画、クラシックCD、動物のドキュメンタリーDVDを見させ聞かせていたアレ――において、が極端に興味を示したもの――それが"占い"だった。
はじめは星座の話から始まったのだが、がちらっと"星占い"と口にした瞬間に少女は「うらないってなに?」といつにもまして真剣に聞いてきたのである。
彼女はそれに確かな手ごたえを感じ、これが彼女のキーパーソンであると確信していた。
そしては占いのやり方から占いの種類、現在どのような占いが確認されているのかなどあらゆるツテとコネを使って調べ上げ、その知識をに与えていったのである。

、そのカードちゃんと使わないとだめよ。実際に魔女と呼ばれた人が使っていたものだと聞いているから」
「・・・うん、わかった」

いやに真剣なのもそのはず。
カードからはなにやら得体の知れないオーラが漂ってきているし(特別まがまがしいわけではないから、死者の念がこもっているわけではない)何より、タロットカードはその良し悪しにかかわらず人を選ぶカードである。
使わないと占力を失ったり、逆に暴走してひどい目にあうこともしばしばある・・・――と、言われているのだからなおさらだ。

「うーん、じゃあやっぱりあたしの"能力"決まりかなぁ」

ぼそりとつぶやいた少女の言葉に、彼女はニヤリと笑った。
ここに、齢3歳にして念能力を開発する奇才が生まれようとしている・・・――。
彼女は自分の背筋を悪寒とは違う何か別の、もっと特別な何かが走り抜けたような気がして、身震いした。

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