ズッシリと聳え立つ門すら彼女は上空から飛び越え、その紅い狼をもってしてあの銀髪の大男が住まう城のような豪邸に、文字通り降り立った。
殺気も露な彼女の前にスーツ姿の男が数名現れるがしかし、彼女はその深く淀んだ緑の瞳で彼らを冷たく見据えるや否や愛用の鉄線を振う。
彼女が悠然と歩いていくその傍らで彼らは次々と倒れこみ、起き上がる気配は無かった。

「ホッ・・・久々にえらいのが乗り込んできおったわい」

深紅のビロードが敷き詰められた階段のその上に、彼らは居た。
銀髪で大柄な男と、割合小柄で身軽そうな年配者は静かな殺気をその体に纏らせ、階段下の彼女を見据える。
無表情に見下ろしてくる大柄な男の、その金色とも銀色とも取れる瞳を彼女は深く淀んだ緑の瞳をもってして射抜いた。
男の雄雄しい眉がピクリとはね、その一瞬のうちに彼と彼女の姿は消えた――否、一瞬でその場を移動し彼女は鉄線を、彼はその爪をもってして間見えたのである。

「聞きしに勝る・・・とはこのことだな。お前、ブラッドウルフか」
「・・・ええ」
「最近めっきり噂を耳にしなくなったが・・・なるほど、死んではいなかったようだな」

彼は切れた頬から流れる血をその手の甲でぬぐい、ふっと笑った。

「だが、動きが少々鈍い・・・子でも孕んだか」
「それ、セクハラっていうのよ、シルバ=ゾルディック」

言いながら、彼女は彼の爪でほんの少しだけ抉られた左腕を抑える。
大柄な男は口の端だけで笑い「それはすまない」と小さく口にした。

「して、何の用かの、お嬢さん」
「お嬢さんはやめていただけないかしら。コレでも立派な人妻なのよ」
「じゃがワシらはお前さんの名前を知らんもんでな」

食えないジジィめ、と彼女は腹の奥底で悪態をつきつつ、彼らをその深く淀んだ緑の瞳で見据えながら最近やっと慣れてきた――彼にそういったら「遅い」と言われたのはつい最近のことだ――その名を口にする。

「"=ルシルフル"よ。夫に代わって"挨拶"に来たわ」























彼女が本拠地に戻ると、1階の居間がものすごいことになっていた。
まるで、嵐か何かが突然襲ってきたような・・・。

「ああ、。おかえり」
「ただいまクロロ・・・どうしたの、これ」

彼はその黒く透明な瞳を少し困ったように細めてから、後ろのキッチンを指差した。
訝しく思った彼女はしかし、次の瞬間その深く淀んだ緑の瞳を極限まで見開く。
彼女の視線の先には、普段は真っ黒でまっすぐした瞳をもつ少女がその目を真っ赤に晴らし、鎖でぐるぐる巻きにされ、挙句なにやら横でパクノダが「むやみやたらに念を使ったらいけないって、あれっほどお姉ちゃんいったわよね!?」と説教を垂れる姿があった。

「え、なに、これがやったの?」
「ああ。例のタロットでな」

肩をすくめたクロロである。
あの時、いつもの感じではないの念の気配ですぐさま1階に下りてきたクロロは、すばやく状況を読み取り少女に「はソルディックへ行った。別にジルの復讐じゃない。ただ、今回のことで少し有利に事を進められるからコネを作りにいった」と伝え(3歳児の頭にもわかるように説明するのに少し時間がかかったのは否めない)パクノダを解放するように言い、その後で叱ろうと思っていたのだが、パクノダの行動のほうが早かった。
風の渦から解放された彼女は無言のまま少女に歩み寄り、その手の平でもって少女の頬を強かに叩いたのである。
その威力は普段仕事で戦う彼女にしてみれば何億分の一という力配分だったわけだが、如何せん"仕事"と"私生活"とではなんというか、凄みがまったく逆のベクトルに働いているわけであって・・・クロロは不覚ながら、一瞬目を瞑ってしまった。
パクノダはワナワナとその唇を震わせながら「!あなた、私に何をしたのかわかってるの!?」と左頬を押さえて呆然としている少女に詰め寄り、そのことでハッと我に返ったらしい少女が「ごめんなさい」と謝りながら泣き出した。
だがしかしてパクノダの説教はとどまるところを知らず。

「ああ・・・パク、"私が聞きたいのは謝罪じゃなくて、私に何をしたかわかっているのかきいてるの"とかいったんでしょ」
「・・・驚いた。見てたのか?」
「まさか。でも、私もされたらそう言うもの。・・・まったく、パクはいいお姉ちゃんね」

は楽しげに笑ってから、いまだに続いている姉の説教をいつ止めに入ろうか、と考えた。

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さて、次回から原作軸に入ります。
今回はGI編まで行きたいと思っておりますので、長いお付き合いになるかもしれませんがよろしくお願いします。
しかし・・・彼女は戦闘シーンになるとどういうわけか生き生きしますね・・・。
書いてるときものすごく指が滑らかに動きましたよ。
もしかしたら彼女は戦いたいのかもしれません・・・。