「刺青って結構痛いのね」
「そりゃアンタ、胸になんて彫るからさ」

20分もしないで着てくれたマチは――ひさしぶりに全力疾走してきた、と汗だくで言われた――その汗も納まらないうちに彼女の左胸に蜘蛛の――4番の刺青を入れてくれた。
これが、例のヨークシンシティでの際の追加料金。
本来ならカルトが入るべきなんだろうけれど「もし、無事に蜘蛛を守ることができたなら、その報酬に」と強請っておいたのだ。

「そうだ、ウボォーはちゃんと戻れたの?」
「ああ、ピンピンしてるよ。他のメンバーも皆元気にやってる」

マチは肩をすくめて「ただ、あれ以来全員で集まってないけどね」と笑った。
鎖野郎ことクラピカは倒れたまま、仲間と子供2人―おそらくキルアとゴン、センリツのことであろう―に引きずられてあの場を離れ、以後消息が確認されていないことから【束縛からの解放―フェンリル―】はどうやら有効のようだ。
ヒソカはあの後、結局我慢できずに偽りの仮面を脱ぎ捨ててクロロと戦ったらしい。
そして決着はまだ付いていないとか。
マチの話では月に2、3度フラリと現れてはクロロと一戦交えて去っていくらしい。
は「ただ単に構ってほしいだけっぽいわね」と微妙な顔をした。
それがどこかのツボに入ったのかマチは大笑いして「そろそろ仕事に戻るね」と笑い収まらぬまま立ち上がる。

「仕事・・・って、蜘蛛の?」
「あぁ、そうかはまだ聞いてないんだね。・・・実は今ちょっと困った事になっててさ」

マチはチラっと時計を伺ってから眉間に皺を寄せて「ごめん、やっぱり団長からきいて」と足早に去っていった。
































「は? 偽者?」

彼女は何の冗談か、とその暗く淀んだ緑の瞳をめいっぱい見開いた。
それにクロロはため息をついて「オレも同じ気持ちだ」と肩をすくめる。
要は"幻影旅団"の偽者が出たらしいのだ。

「って、え、なによそれ。放っておけばいいじゃない。別に害は無いでしょ?」

というか、逆に仕事もしやすいような気がするが。

「まあ、最初はそう思っていたんだがな・・・」

彼の話では、その偽者との遭遇率が以上に高すぎる、と。
仕事現場ではないだけまだましなのだが、団員たちがふらりと立ち寄る都市で必ず"偽の幻影旅団"が現れて、彼らがあまり手を出さないような、彼らにとって価値の薄いもの――彼らは難攻不落の財宝やら闇市でしか出回らないような珍品などの所謂レアモノを狙う傾向がある。理由はそのほうが面白いから――を盗っていくのだという。
まるで何かの充てつけのように。

「つまり、何らかの方法で団員の居場所がしられてて、しかもまるであざ笑うかのように蜘蛛の名前で変なもの盗ってくってこと?」
「まあ、ぶっちゃけるとそうなるな」
「頭悪い連中ね・・・でも居場所がばれてるだけなの?今のところ被害とか・・・」
「実質被害はまだない。最近オレの欲しい物が無かったもんだから、表立った活動はしてなかったし」
「なるほどね・・・あれ、でもまって・・・じゃあ、今マチたちがその偽者を捜索してるのって」

彼はその黒く透き通った瞳で彼女をジッと見つめてから、その形の良い唇の端をあげる。
曰く、近いうちに仕事をする、と。

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