「やったー!やっときてくれたー」
「なかなか出てきてくれないから、どうしようかとおもいました」

彼女たちは目の前ではしゃぐ2人の子供に目を白黒させながら、その顔に引きつった笑みを浮かべた。
こんなおちゃらけた口調(一人は嫌に礼儀正しいが)ではいるものの、この子供たち、既に念を習得しているらしい。
彼らのオーラはひどく滑らかで、おそらくはゴンやキルアと同じような、否、それ以上の才能の持ち主。
まあ、いい。それはいい。
そんな才能の持ち主であれど所詮は子供。彼女たち―――蜘蛛の手にかかればまさに赤子同然。
だが、ひとつ問題が・・・―――。
















事は、5時間ほど前までさかのぼる。
偽旅団の情報は結局錯綜したまま、彼らは仕事を結構する羽目になってしまった。
というのも、どこから漏れ出たのか「"ウルゴンダ王国展"の"リンカレンの剣"を、蜘蛛が狙っている」という噂が実しやかに流され、ビビった美術館館長とウルゴンダ王国展主任があと1週間の期間を短縮して"今日が最終日"としてしまったのである。
これにはクロロも盛大に舌打ちするしかなかった。
おそらく情報を流したのは例の偽旅団であろう。
彼は・・・――否、彼らの行動はすばやかった。
あと1週間かけてじっくりと作戦を立てる予定だったのだが、何とかそれを1時間で急遽まとめ(シャルナークが終わった瞬間に白目をむいたのはいたしかない事だったと様に思う)2時間で移動の後、閉館の瞬間を狙って派手に乗り込んだのである。
もちろんそれでは偽旅団の思う壺であるのだが、何よりクロロも団員たちもほとんどキレていた。
売られた喧嘩は、売買キャンセルされても買う彼らである。
リンカレンの剣を盗った後はただ只管館内の人間をいたぶり付くし(そんな彼らをは生ぬるい目で見やってから一人美術鑑賞に浸っていた)偽旅団到来を待った。
そして、冒頭に戻るのである。

彼らはおそらく双子なのだろう、とても似た容姿をしていた。
一人は短髪。まるで芝生のように刈上げられたキラキラ輝く黄金の髪に、空も真っ青になりそうなコバルトブルーの瞳。
もう一人は長髪。サラサラと流れる白金の髪に、海のような輝きと奥深さを持つ深海の瞳。
そして何より、とても薄い。
気配がでは無くて、ホログラムのように彼らの体全体が、薄い。
そうまるで・・・―――まるで、幽霊か何かのように。

「なん・・・なの、あなたたち」

は何とか衝撃から抜け出して(だが顔は引きつったままだ)口を開いた。
彼らはお互いにきょとんとした顔をしてからお互いに見つめあい、もう一度のほうを向く。

「ああ、やはり記憶は消去されてしまいましたか・・・僕はリライと申します」
「俺はリロウだよ!」
「時と世界を司る女神の代理人として、世界を調停しに参りました」

少年たちが微笑んだ瞬間、彼女の口が音がするのではないかという勢いでパカッと開いた。

























全ての世界は平行であり、魂は平等で1つ。
片方の世界の体が滅びれば、片方の世界で新しい体ができるまでもう片方へ魂が完全移行するようにできている。
意識はそれぞれの世界で独立しており、魂はひとつなれど意識はけして交わることが無い。
そしてその管理をしているのが"時と世界を司る女神"である。

「で、私はあなたたちの凡ミスで、向こうの記憶があるままこっちの意識と完全融合してしまった、と」
「う・・・ごめんなさい。ほんとならもっと早く直したかったんだけど」
「・・・間の悪いことにもう一方の世界での体は、眠りつつ生きている状態であったので、法律が邪魔して修正できなかったのです」

だがしかし、今回は違う。
あちらの彼女の体は完全に滅んでしまった。

「それで、どうするんだ? まさか・・・」

黒く透き通った瞳の奥で、暗い炎がゆらゆらと揺れている。
それを見て取ったのか深海の瞳を持つ少年は「いいえ」と少し焦って否定した。

さんはあちらの体が無い状態ですので、こちらの体をどうこう、ということはできません」
「それに意識と意識が完全に融合しちゃってるし、歪みが発生したのは過去のことだから、もうさん自体をどうにかしても世界の歪みは直らないんだ」
「調停者だかなんだかしらないけど、随分後手後手なんだね」
「ちょっとシャル、こんな子供にそんな言い方ないでしょう」

シャルナークの言葉に双子は子供らしくない笑い方をして、目を伏せた。(因みに本人とクロロ、シャルナークとパクノダ以外は全員話に付いていけず、後ろのほうで雑談を始めている。)
があわてて「ごめんなさいね、彼はこういう人だから」と慰めれば、彼らは笑いながら「いいえ、僕らの責任ですから」と被りを振った。

「まあ、そういうわけで僕らは最終手段に出なくてはいけなくなりました」
「と、いうと?」
「過去の改ざんだよ」
「・・・・・・・は?」

笑顔でものすごいことをいった双子に、その場の全員の目が点になったのは否めない。

「過去から調整していって、歪みを最小限にします」
「ぐ・・・具体的には」
「"今の時間を戻して歪む前からやり直し"だね」

彼女は頭を抱えた。
何かの映画かアニメかで、こういうのなかったっけ?あったよね、あったよ!と泣きそうになる。

「ただ俺たちはさんには直接手を出せないから、さんの記憶はたぶん過去に一度戻っても、どこかで融合しちゃうと思うんだ。それは必然だってノルンの人も・・・あ、同業者の人のことなんだけど。その人もそうなるって言ってたから」
「ですが何度も言うように僕たちの仕事は"世界を調停する"ことです。なのでそのためには、さんの協力と、それから」

双子はその色違いの青い瞳を、クロロに向けた。
その黒く透き通った瞳がわずかに見開かれる。

「あなたの協力が必要です、クロロさん」
「俺の・・・?」
「はい、あなたの」

双子はにっこり笑ってから「けしてさんとクロロさんを別れさせるような真似はしませんよ」と美術館の長いすから立ち上がった。
クロロとは互いに顔を見合わせてハッとする。
自体に何かをすることは、彼らには出来ない・・・なのでの協力が必要。それは判る。
では、クロロは?
クロロ自体は平行世界の歪みに関わっていない。だが、クロロの協力も必要である・・・―――そして彼女たちを別れさせるような真似はしないという。過去を改ざんするといったその口で・・・それは、つまり―――。

「僕らに出会った記憶は過去を改ざんした時点で消えてしまいますので、ここでお別れです」
「がんばってね!・・・って、がんばるのは俺らだけどっ」
「ちょ、ちょっとまって!!」
「俺ももお前らみたいなクソガキはいら」

















「「【過去の書き換え―リロードリライト―】」」













BackNext