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最近やけに器物は損報告書が多いなぁ、なんて思いながら「雲雀恭弥」と走り気味に彼の名前を書いていく。
しっかりトレードマークになってしまった、恭弥にもらった真っ黒な大きめのキャスケットちょっと押し上げて、あと1枚かいたら休憩しよう、と伸びをした。
並盛中学校の生徒というわけでもないのに応接室に入り浸っている私だが、別にとがめられてはいない。
それはきっと偉大なる暴君様の後ろ盾があるからに決まっているのだが、それに甘んじてしまっている私も私だろうか。
まあ、問題があるわけでもないので(しいて言うなら、私が来なくなったほうが問題かもしれない。書類が溜まる的な意味で)今日も今日とて入り浸っている。
例の巨大な斧は、あの雪の日から一度も出現させてはない。
その必要がないからというのもあるが、できればもう出現させたくなかった。
それが最良なのだとおもうしなにより、私は"普通の人間"でありたかったから。
「あ、草壁」
「ああ、さん。外回りお疲れ様です」
外見に似合わず礼儀正しい草壁がきっちりと頭を下げるのに「ありがとー」と苦笑した。
明らかに私より年上の草壁はなぜか、私に敬語を使う。
いくら「ふつうでいいのにー」といっても苦笑されて「けじめです」と返されるので最近はほったらかしだ。
「恭弥は?」
「委員長なら会議も終わってますし、応せ」
おそらく「応接室にいるはずです」と続くはずだった言葉は、突然の爆音によってかき消された。
驚いて音がしたほうを振り仰ぐ。あの位置は・・・―――。
「っさん!?」
草壁の呼びかけよりはやく、私の足は爆心地へと向かっていた。
あの場所は・・・応接室だ。
「っ恭弥!」
スパァンッと勢いよく引き戸をひいて応接室に文字通り転がり込んだ。
爆発騒ぎなんて今までなかったし、もしかしたらなんぞヤバイ連中に目をつけられちゃったんだろうか、この暴君様は。
しかもそれがあり得ないことじゃないっていうのが問題だ。
かなり問題だ。
「恭弥っ怪我っ!!さっきの爆発!?」
爆風で割れてしまったらしい窓をじっと見つめていた暴君様はクルリとこっちに向きかえり、ニッコリ笑った。
そう、ニッコリ。
「きょう、や?」
ビビッてしまったのは仕方のないことだと思う。
暴君で、不敵な笑いでいつも周りを見下している恭弥が、ニッコリ笑った。
なんという恐怖だろうか。いやな予感しかしない。
「お帰り」
「あ、うん、ただいま・・・えっと、恭弥・・・さっきの爆発、なんだったの」
「ああ、うんちょっとしたハプニングかな」
なに、その、ハプニングって。
しかも結構な爆発だったと思うのに、窓全部割れちゃってるのに"ちょっとした"なんだ。
思わず遠い目をしたが、彼の持ってるトンファーにちょっと血がついているのは事実で、それはここで少なからず戦闘が行われたということを示していた。
「怪我は?」
「・・・ないよ」
「・・・そ」
一瞬ムスッとした顔をしたのはきっと、気に障るような反撃でもされたからだろうなぁ。まあ本人は怪我ないっていってるし、いいか。
はぁ、と軽くため息を吐いたところで草壁が「委員長っさっきの爆発は!!」と肩で息をしながら入室してきた。
私はその草壁と視線をあわせて、肩をすくめる。
「ちょっとした、恭弥が最高にうれしくなっちゃうハプニングがあったんだってさ」
草壁の頭の上に、疑問符が並んだのは言うまでもなかった。 |