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メールで「敵、黒曜第一、笹川証言」と短い文面を恭弥に送り、運ばれる笹川を見送ってから並盛中央病院の正面玄関をくぐった。 「・・・問題は」
この並盛中央病院はいわゆる総合病院であり、規模はそれなりに大きい。 「さて・・・どうしたものか」
ふっとため息をつくと、並盛生でごった返しているロビーが一瞬だけザワリと揺らめいて、ゆっくりとした漣に変わる。
「さん、お疲れ様です」
その瞬間、ロビーがまたザワリとゆれる。
そうですか・・・と、草壁は何事か一瞬考えてから「では」と何かを言いかけてハッと顔を引き締め後ろに飛びのいた。 「っ!」 ヒャハハ、と嫌に癇に障る笑い声とともに、その少年は現れた。 「あー、どっちがクサカベ?」 ズイッと一歩前に出た草壁も、負けず劣らず挑発的な視線で幾分彼からすれば背の低い少年を見下げた。 「・アルバ=アルビカーレ」
「君は、僕のエモノです・・・クフフ」 少年の伸ばされた手を振り払った瞬間に、視界がホワイトアウトして、最後に「さん!!」と草壁のあせった声を聞いた気がした。
「クフフ・・・いらっしゃい。・アルバ=アルビカーレ」 360度真っ白な空間で、男の声だけが反響している。 「・・・誰だ」 静かに問いかければ、声の主は「クフフ」と独特の笑みをたたえてゆっくりと姿を現した。 ギシリ、と記憶のふたが開く音がした。 「く・・・」 オッドアイの彼は面白そうに私を眺めてから「記憶にふたをしたんですね」としたり顔で、ムカツク。 「まあ無理もありません。あれだけ残酷なことが起これば、防衛本能が働いて当然です」 出現させた巨大な斧をぐっと握りこんで、間をおかず横に凪ぐ。 「ほら、この場所、覚えていませんか」 幾重にも伸ばされたコード。 「・・・こ、こは」 ああ、そうだ、ここは研究所。
出現させていた斧が、さらさらと砂のようになって存在を消していく。 「僕とあなたは、ここで出会ったんですよ」 そう、私はこの男を知っている。 私と"同じ存在"だ。 |