ツナと病院で分かれた俺はまず、9代目と連絡を取った。
ツナが心配じゃないとかといわれれば、それは嘘になるが・・・俺の考えが当たっているとすれば、今は一刻を争う緊急事態だ。
一マフィアとしてはこの緊急事態を見過ごすわけにはいかない。
例えもしその考えが見当違いだとしても・・・いや、見当違いであれば僥倖。


けれども、俺の考えは外れていなかった。


9代目からの折り返しの連絡は以外に早く、そして俺は軽い眩暈を起こした。

まず、今回の主犯について。
これはどうやらマフィアを追放された脱獄囚で名前は六道骸。也は少年だという。
看守やほかの囚人を皆殺しにしてきたらしいが・・・脱獄の手腕、その後の逃亡経路の確保の迅速さをとってみても相当な手馴れだ。

そして、もうひとつ9代目に問い合わせた件がある。
だが、その答えは返ってこなかった。

俺はため息をついてから懐にしまっていた、フゥ太の並盛中ケンカの強さランキングを手に取り、視線を走らせた。
4位に獄寺、3位に山本。そして1位には、堂々と雲雀恭弥の名前。
問題は、2位。

「・・・・アルバ=アルビカーレ」

その名前に見覚えはない。
学校に忍び込んで全学年の名簿を見たこともあるが、その名簿にすら、その名はなかった。
けれど、このランキングは雨の日以外で製作された正当なもの。
・・・ならばこの、・アルバ=アルビカーレという人物は、何者なんだ。


―――・・・なぜこんなにも、胸騒ぎがする・・・?


「・・・チッ」

俺はあからさまな舌打ちをして、きびすを返す。
そろそろツナの元に戻って、発破かけねーとな。

































「・・・う」

ズキズキと痛むこめかみを押さえながら、上体を起こした。
すっと目を細め、視線だけであたりを見回す。
薄暗いとても広い部屋。窓は一切ない。出入口はひとつ。
察するに、劇場か映画館といったところか。
目線を下に動かすと、白いクッションと少し埃っぽい革が見えた。どうやらソファに寝かせられていたらしい。

「目覚めたようですね、クフフフ」

その独特な笑い方に眉を寄せた。

「・・・その気味悪い笑い方、やめて、六道骸」
「おや、無事思い出したようですね」
「・・・あんたが勝手にっ・・・っ!」

その瞬間、ガシャンッと首元で金属をこすり合わせたような音が聞こえた。
これは・・・首輪?

「ああ、無理して動いたりしたらだめですよ、拘束させてもらってますから」

ギッとにらみあげると彼は「そう睨まないでくださいよ」と、ちっとも怯む様子は見せずに笑う。
悔しくて下唇をかみ締めた。悔しい。・・・悔しいが。

「・・・恭弥、きてるんでしょう」

おそらく、私がメールを送ってからすぐに返信が来なかったことを察するに、単独でここを探し出し先に暴れていたはず。
彼の安否は、どうなっているのか。
今は私が捉えられているということよりも、そちらのほうが先決だ。
骸は2,3度瞬きをしながら「キョウヤ・・・ああ、ヒバリキョウヤ・・・彼ですか。クフフ・・・」と意味深に笑った。

「・・・何がおかしい」
「そう怖い顔をなさらないでください。殺しはしていません、彼は大事な人質です」

人質・・・?恭弥が?
あの恭弥が人質だというのか。
それは、誰に対しての、だろうか。・・・いや、そんなもの、一人しかいない。
私は勤めて冷静に、その青と赤のオッドアイを見返した。
骸は心底楽しそうに笑う。

「クフフ・・・ご明察。僕は雲雀恭弥と引き換えに」

骸の手が私へと伸び、頬を掠めて黒いキャスケットを・・・恭弥にもらったあの帽子をゆっくりと取った。
露になる白い髪と、赤い瞳。
さらさらと零れ落ちる白い髪を別の手で一房救った骸は、まるで愛しむかのようにそれを唇へと寄せた。

「アルバ=アルビカーレ、貴女の力を要求します」
「っふざけ・・・!?」

チクリとした痛みを感じた瞬間グラリと体が傾いで、革張りのソファに倒れこむ。
瞼が重くて、あけていられない。何か、盛られた!?

「・・・くっ」

―――・・・恭弥っ



















「・・・じゃあ、このザコ2匹はいただくよ」
「好きにしやがれ」

僕は今、機嫌が悪い。
近年まれに見る機嫌の悪さだと自分でも思う。
あの奇抜な頭のオッドアイに倒されたのも気に入らないし、気がついたら壁に囲まれてる小さな部屋にいたっていうのも気に入らない。
自力で出れたのに先に壁を壊されて(しかも壊したのはあの草食動物の仲間だし)事実上助けられた形になったのもすこぶる気に入らない。

「死にぞこざいが何寝ぼけてんだ? こいつは俺がやる」
「・・・いうと思ったけど、犬。骸さまがこいつはあの女に対する人質だっていってたし、殺したらまずい」
「・・・人質?僕が?」

誰に対しての・・・か、なんて決まってる。
僕の身辺にいる女なんて、一人しかいない。
ツィッと唇の端が上がる。
君たちは、やっちゃいけないことを、やったね。

「僕のものに、手を出したんだ・・・」
「・・・っ」

ジリッと彼らが一歩後退した。
なんだ、怖気づいたのかい?・・・でも、許してなんてあげない。

「・・・噛み殺す」

いうのと同時に、床をけった。