|
「・・・」
薄い光に身じろいで、瞼を押し上げた。
「おきたか」
人の気配はないと思っていたのに! 「そう警戒するな・・・ここだぞ」
ふっと、視線を下にずらす。
「ヒバリがずいぶん心配していた」
この赤ん坊はたしか、一度見たことがある。
「アルコバレーノ・・・」
私のつぶやきに、黄色のアルコバレーノは答えない。 「・・・お前は」 黄色のアルコバレーノは表情を読ませない顔で、ゆっくりと口を動かす。 「お前は、何なんだ」
それは、ただただ漠然とした問いかけ。 だって、そんなのは私が知りたくて、知りたくもない事。
「なぜ、アルコバレーノでないお前を前にして、俺のおしゃぶりが光る」 その、深い深い闇を抱いた黄色のアルコバレーノのつぶらな瞳が、大きく大きく見開いて、私を凝視した。
「そんな・・・まさか[ユミルの心臓]を!?」 そこまできて黄色のアルコバレーノはハッとしたように私をみて「まさか」と口の中でつぶやいてから再度私をじっと見つめる。観察しているような、値踏みしているような視線に私は居心地の悪さを覚えて少しばかり息を吐いた。
「お察しのとおり、エストラーネオよ」
そういえばあの青と赤の狂気の彼は、どうしたのだろうか。 「・・・じゃあお前が"Neve・Uscente"なのか」
突然つぶやかれた彼の弱弱しい言葉はしかし、確信と困惑とが入り混じっている。 「またずいぶん、懐かしい名前を出してきたわね"Sole・Palingenetico"」 その言葉に身を硬くした彼に「でも」と否定の言葉を吐いた。 「今の私は""よ。今のあなたが、違う名前を持つように」 かみ締めた言葉の味は、ほのかに苦く、苦笑しかできなかったけれど。
「」
黄色のアルコバレーノ――リボーンと話をした翌朝。
「そういえば・・・恭弥、骨折したんでしょ? 普段」
「普段の生活とか大丈夫?支障ない?」と健気にも心配して(というか、もう母親の心境に近い心配の仕方だなぁ。いくら家事全般ができるからって、けが人だし。骨折だし)解毒すんでるし、身体的には健康なんだから退院しようかな、と思っていたのに。
「・・・何その顔」
あれ、なんか前にもこんな会話しなかったっけ?デジャヴ?
「前、私言ったよね"わかったら、ちゃんと言うからね"って」
あの巨大な斧・・・―――【聖斧―ミョルニール―】のこと。
「・・・あのね、私」
意を決した私の言葉をさえぎって、彼は私と視線を合わせた。
「僕も前にいったね。君は僕の兎だって」
いわれた言葉に私は瞠目して、キュッと唇をかみ締めた。 怖い。 わからない。変わらないなんて保障も確証もない。
「・・・何か勘違いしてないかい」
瞬間、視界に入った黒い髪と彼の匂いに驚いて胸が高鳴る。 「僕は君が"ダレ"だってかまわない。君は君だから」
ああ・・・―――。 「君の名前が""でなくなっても、君は君で・・・僕の兎なんだよ」
ああ・・・―――。 「だから、無理に君の過去を話さなくてもいい。君は今の君であればいい」 この人は・・・―――。 「君は、僕の愛した小さな小さな兎なんだから」 何で、今一番ほしい言葉をくれるんだろう。 「・・・恭弥、大丈夫」 そして、この人もきっと、私と同じ不安を抱えてる。 「私はいなくなったりしないから」 恭弥の心臓の音が、少しだけ早いのは、きっと不安だから。 「人に慣れた兎はね、一人じゃ生きていけないんだよ。寂しくて、死んじゃうから」
私は本当の兎じゃないけど、と少し笑って恭弥の胸から顔を離して、彼を見上げた。 「あなたには、聞いてほしい恭弥・・・私の、過去を」
瞬間恭弥の顔が笑って彼は「うん」とつぶやいてから、私の目じりに唇を落とした。
|
![]()
![]()
![]()
私の過去を〜・・・とかいっといて、過去の話はありません。
次回からはヴァリアーです。(アッレェ!?)
彼女の過去はいろいろな偶然と悲劇が重なってそれはもうドロドロなので、<過去編>とひとつにまとめると、なんかものすごく読むのがつらくなってしかも書くのもつらいので、本編に織り交ぜていく予定なのです・・・。未来編でちゃんと明らかになるはずなので今しばし彼女の謎をお楽しみくださいませ。(ただし、どうやら雲雀さんは彼女の口から過去話をきいたようなので、それが今後にどう影響するかですねぇ、フフフ)
・・・それにしても、ツナ視点になるとギャグにしかならないのはなんでだ!!(書いてるほうはすごい楽しいけど!やっぱりツナ好きだ!)